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「建築の旅」47

2023.07.21建築の旅

ほぼ1年にわたって連載を続けてきた「建築の旅」も残り2回となりました。
今回は私が好きな現代日本の建築を紹介します。
まずは渡辺仁設計の第一生命ビルです。
第二次世界大戦間近の1935年の竣工です。
渡辺仁は上野にある国立博物館本館(1937年竣工)なども手がけた建築家で、活躍した時代が戦前ということもあり、国家的建築家であったにもかかわらず、戦後は作風が歴史主義的だったり帝国主義的だと批判されることが多い建築家でした。

しかし、世界的に見れば、エストベリやエリエル・サーリネンとのようなヨーロッパの辺境の国々で起こった民族主義ロマンチシズムの建築家たちと同時代に活躍した建築家として、今以上に評価されるべきだと思います。
戦後はとかくイデオロギーが問われ、民主主義的な建築が評価が高く、国家主義的建築は低い傾向がありますが、戦前の国を背負って建てられたプレモダン建築のほうが、物としての存在感があり、耐久性が高く、時代の変化に対応でき、建築としての質が高いことは紛れもない事実だと認めざるを得ません。
第一生命ビルはその一番良い例だと思います。
ちなみにこれは1979年の撮影で、まだ背後に高層棟が増築される前の姿です。
次は国立西洋美術館。
1959年の竣工。これも35年前の撮影で改修前の姿です。

設計はル・コルビジェですが、実施設計と設計監理は弟子の坂倉準三の事務所が行いました。コルビジェは建築をいかに作るかには興味がなかっらしく、現場には一度も来なかったとのことです。


次は私の師匠の前川國男の建築です。
これは丸の内にある東京海上ビル。1974年に竣工しました。

前川さんは1960年代までは打放しコンクリートの建築を数多く設計していましたが、日本の気候風土では耐久性に問題があることに気づき、70年代に入ると打ち込みタイルという剥落の恐れのない工法のタイルで外壁を覆う様式を採用するようになります。
しかし50年近く経つ東京海上ビルではその外壁にも問題が生じ、高層ビルだけに補修が難しく、ついに取り壊すことになってしまいました。
金属やガラスのツルツルした超高層ビルが多い中、褐色で彫りの深い外観が孤高の美しさを際立たせていたこの建築が失われてしまうのは、本当に残念でなりません。
これは解体が進みつつある今の姿です。


次は東京都美術館です。
東京海上ビルと同じ1974年の竣工で、こちらは綺麗に保存改修されています。
完成したばかりのこの美術館の横を通って大学にかよった思い出深い建築です。

まだレストランの増築前の写真で中庭の奥に旧国会図書館の屋根が見えています。
続いて東京文化会館の小ホール。
東京文化会館も名建築ですが、私は小ホールのこの内部空間が一番好きです。


続いて、丹下健三の建築です。
戦後日本の近代建築を代表する作品といえば、やはり代々木体育館ではないでしょうか。


そして東京カテドラル。
静岡新聞社ビル。
丹下さんの中では小規模ですが、好きな建築です。

今はなき、黒川紀章の中銀カプセルタワー。
大阪万博の2年後、1972年に完成しました。黒川紀章38歳の作品。
まだ21世紀が薔薇色に見えていた時代、日本の近代建築が世界を一瞬リードした時代、を象徴する建築です。


最後にこれも今は亡き、菊竹清訓の都城市民会館です。
清訓さんが38歳のとき、1966年に竣工します。
ものすごい造形力です。圧倒されますね。
私とはスタイルが違いますが、菊竹さんは好きな建築家の一人です。


では、次回は最終回。
45年前に撮影した、懐かしい昭和の東京を紹介します。
お楽しみに。

(横内)