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「建築の旅」3

2022.10.11建築の旅

今回は前回に引き続き、ルイスI.カーンの建築です。
一つはイェール大学のアートギャラリー。もう一つはその向かいに建つポールメロンセンターです。前者は1953年竣工で、カーンの名を知らしめたいわばデビュー作。後者は1974年作で、これが遺作となりました。その二つが向かい合わせに建っているのも何かの因果でしょうか。
右手奥の外壁に水平のコーニスがついているのがアートギャラリー。
その向こうはポール.ルドルフ設計の建築学科校舎。
左手がポールメロンセンター。
アートギャラリーは手前の古い博物館の増築として建てられています。カーンは博物館の建物に敬意をはらい、外壁面の位置と高さを揃え同系色のレンガを積んでいますので、表現は控えめですが街並みが綺麗に整っています。一方で1963年竣工の建築学科校舎は外観が彫刻的で個性が強い建築ですが、あまり都市景観の調和に配慮しているとは言えません。カーンとルドルフの考えの違いがよくわかりますね。
ガラス壁面の一階がエントランス。それをはいると中庭に面したエントランスホールに出ます。
天井は張られていず、三角錐が連続する形の特殊なコンクリート打ち放しの立体トラスによるスラブが現しになっていて、照明や空調といった設備はすべてこのトラスの厚みの中に隠されています。天井を張ってしまえば簡単なのに、あえて設備がすべて収まるような構造の秩序を考え、それを表現とする。これがカーンの真骨頂で、空間の力強さに繋がっています。


前回のエクゼター図書館同様、階段の収まりは見事でした。



次はポールメロンセンター。
外壁はコンクリート打ち放しのフレームに、特殊加工を施したステンレスのパネルが同面ではめ込まれています。ただしパネルの下端にはしっかりとした水切りが付けられていて、外壁が雨で汚れないように考えられているのがわかります。
一階はショップが入っていて、雨宿りができるようにガラス面が90センチほど引っ込んでいますが、柱も一本飛ばしになっていて、公共の用途であることを表現しています。
エントランスホールは吹き抜けになっていて、トップライトからルーバーによりコントロールされた美しい光が降り注いできます。壁はオーク材のパネルで、コンクリートの柱が少し奥まっていることで同面収まりにもかかわらず厚みが感じられ重厚感があります。
もう一つの吹き抜けには円筒形の階段室が収められています。その階段を上がると最上階がギャラリーになっています。
ギャラリーの一部は収蔵展示室になっています。
これは収蔵展示室の窓に設けられていたガラリ戸。細かい調光が手動でできるようになっています。
黒い部分には空調の縦ダクトが収められています。その上部のコンクリートの梁は中空になっており、下端のスリットから全館に万遍なく吹き出すように考えられています。
これも構造躯体と設備を一体に計画するカーン独特のやり方ですね。
今日はここまでです。



ちなみにこれらの写真はすべてCodaclomeまたはEctaclomeというポジフィルムを使い、このカメラで撮っています。
CanonのF-1というプロ仕様の一眼レフで、建物の垂直が歪まずに撮れるTS-35というシフトレンズを付けてあります。
これは「芸大に現役で受かったらなんでも買ってやる...」といった親父が持っていたのを、褒美にもらったもので、以来どこに旅行する時も持ち歩きました。50年前に50万円ほどもしたカメラです。レンズは2年ほどアルバイトして買いました。
旅先で2度置き忘れたことがありますが、2度とも運良く出てきたラッキーカメラで、いまはもう使っていませんが、若い時の思い出が沢山染み込んだ大切な父の形見です。


ではまた次回をお楽しみに。
(横内)