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「建築の旅」9

2022.11.08建築の旅

こんにちは。今回は落水荘を訪れます。

落水荘はほかに全く家がないペンシルバニアの山の中にあります。
いまは見学ツアーのためのビジターセンターが近くにあり、そこで車を止めて山道を歩いていくと森の中に姿を表します。木々の垂直な幹と水平線を多用した建物の対比がとても美しく、アプローチから目を奪われます。撮影は1978年ごろだと思います。
橋を渡り山側から建物に入るのですが、まず手前の河岸から外観を見ることにします。
下から見ると、重なり合う岩棚に溶け込むように、森と一体化しているのがわかります。
キャンティレバーは5mほどもあるでしょうか。
ではアプローチに戻ります。
建物には低いパーゴラの下からはいります。
入り口の脇には手洗い用の水盤があり、石鹸がぶら下がっています。
入り口を入り、2,3段階段をあがると、すぐリビングルームです。入り口付近は暗いので、正面に広がる緑の景色がとても印象的です。
天井が低く窓枠がスチールなのを除き、窓際にコージーなコーナーがちりばめられた空間構成や石積みの素材感は、「建築の旅-7」で紹介したタリアセンの自邸のリビングとよく似ています。
落水荘は突然生み出されたのではなく、ライトのキャリアの蓄積がすべて注ぎ込まれていることがよくわかります。完成は1936年。世界恐慌の只中でした。ライトは69歳。この年になればこそこんな傑作ができたのだと思います。やはり建築家は長生きしないとだめですよね。


キャンティレバーのテラスに出る開口部。出入り口は引き戸ではなく開き戸でした。
左手は川に降りる階段の降り口。
開口部のコーナーはガラスの突き付けになっています。


テラスに出て建物を見たところ。
これはリビングの上にある2階のテラス。右手が寝室、左手の縦にガラスが続いている部分には書斎があります。
これが書斎です。
内開きの窓に合わせて切り欠かれた机のディテールが素敵ですよね。


このころはツアーでも建物内を自由に見学できて、窓なんか勝手にあけたりしてました。
これらはベッドルームまわりのディテール。風抜きのスリット窓が設けられていたり、間接照明やベッドライトが仕込まれていたり、クロゼットの内部まで丁寧に作り込まれていました。どこも手を抜いたところがない、実に見事な仕事ぶりの建築でした。
階段もほんと、素敵でした。


今日はここまでです。次回はライトの落水荘以降の住宅を紹介します。
お楽しみに。

(横内)