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「建築の旅」13

2022.11.25建築の旅

こんにちは。今回はオーフスという町を訪ねます。

オーフスはデンマークで2番目に大きな都市で、ユトランド半島の中部にあります。1941年に完成した市庁舎はアンネ・ヤコブセンの設計で、家具はその当時所員だったハンス・ウェグナーが担当しています。

ヤコブセンは39歳、ウェグナーは27歳でした。ウェグナーはこの仕事の1年後、3年ほど勤めたヤコブセン事務所を独立して家具作家の道を歩みます。ヤコブセンもこの仕事が高く評価され、以後デンマークを代表する建築家として活躍します。
ヤコブセンも若かったせいか、まだ完全なモダニストになり切ってない感じがして、そこがこの建築の魅力だと思います。つまり機能的でありながら造形が抽象的すぎず、特に細部のデザインには北欧の手工芸的な手触り感と具象性が残っていて、鉄とコンクリートとガラスでできた近代建築の工業生産的冷たさがないのですね。
シースルーのエレベーターも素敵でした。

議場の内部です。木質系のインテリアがいいですね。

議場のロビー。本が主役に見える書棚のデザインがよくできています。
これらの椅子はすべてウェグナーのデザインによるもの。若い頃から才能あったんですね。さすがです。





次はヤコブセンが設計して1961年に完成したSASホテルです。
606号室はヤコブセンスィートといって、オリジナルインテリアが残された部屋があるので、予約して泊まってきました。
60年前のデザインなので、今見るとさすがにちょっと古くさい感じはありますが、特に薄いブルーグリーンで統一された水回りのインテリアは、金物やアクセサリーもすべてヤコブセンがデザインしていて、設計密度の高さを感じさせられました。


これはヤコブセンの集合住宅。中は見れませんでした。






次はヤコブセンとは関係ありませんが、コペンハーゲン郊外にあるグルントヴィークス教会です。
イェンセン・クリントが設計し、20年近い建設期間を経て、彼の息子のコーア・クリントにより1940年に完成しました。ヤコブセンのオーフス市庁舎とほぼ同じ時期に完成しましたが、設計されたのは1913年で、世界の工業化まだそれほど進んでいない第一次大戦以前の時代でしたので、様式は近代以前、表現主義のものとなります。
構造は組積造でしょうか、ベージュ色のレンガで全てができています。
内部はゴシックとはまた違った雰囲気で、シンプルで素朴ですが、雄大かつ神秘的です。
コーア・クリントの名作、チャーチチェアはここのためにつくられたものでした。背もたれが高いのが天井の高い空間と合っていますね。



では次回はデンマークの現代住宅を訪れます。
お楽しみに。

(横内)