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「建築の旅」37

2023.05.12建築の旅

こんにちは。

今回は前回に引き続き30年ほど前に中国に行った時の写真で、北京と上海を訪れます。

当時はまだ鄧小平の改革開放政策が始まったばかりで、北京にも上海にも超高層ビルは一切なく、市内の交通はほとんどが自転車という時代でした。

渡航には明解な目的とビザが必要で、街角には人民服を着て小銃をもった兵士が立っていて、許可なく写真を撮っていたりすると職務質問されたりする物々しい雰囲気だったので、日本に留学していた知人にガイドをお願いしての旅行でした。
まずは北京の旧市街の四合院という中庭型の住宅を訪れます。
これは日本の京町家みたいなもので、間口が狭く奥行きが深い敷地に、隣同士が壁を接する形で建っています。
中国は外敵に襲われて国が滅びる歴史があるので、家々の壁は堅固なれんが造でできていて、特に道路側には中庭に至る小さな入り口があるだけで、あとは壁で閉ざされているのが京町家と趣の違うところです。
これは路地の写真。
中に入るといくつかの中庭が連続していて、その両側が居室となっています。
このような結界を介して3つくらいの中庭が連続しています。
元は一軒に大家族が住むように作られたのですが、当時はアパートのように数世帯が住む集合住宅として使われていました。大した改築をしなくてもさまざまな用途に使うことができるのが、近代以前の民家の文化の違いを超えた共通の特徴です。
そして一番奥には家主が住む立派な造りの住居がありました。
中庭には青桐の木が植えられていて、心地よい日陰を作ってくれていました。聞けば青桐は成長が早く縁起が良いとされていて、中国では良く家の庭に植えられるとのことでした。
日本の町家の中庭と比べ、軒先が高く、明るく、ゆったりしていて、とても素敵でした。家の中が土足なので中庭と室内が直接つながるのもいい感じです。
正面の主屋の前面は土庇になっており、ゆったりした中間領域を作り出していて、その右手が台所になっています。
当時はまだ燃料が練炭という石炭の粉を固めたもので、煙も匂いも出るので家の外に台所があるのでしょうが、外でも中庭に面しているので風も吹かず冬は陽だまりになって暖かいでしょうし、夏は室内より涼しいのだと思います。そんな一番居心地が良さそうなところに台所があるなんてなんで素敵なことでしょう。これなら中庭で食事するのも楽しそうですね。
右手の壁に積み上げられている黒い円筒形のものが練炭です。最近の若い人は知らないかもしれませんが、戦後の日本でもよく使われてた昭和世代には懐かしいものです。左手は水瓶でしょうか。井戸や水道は共同なのでしょう。
中華の台所はシンプルですね。気候と同じで、カラッとしていてじめじめしたところがありません。

調理機器の置き場所がとても機能的です。


これは一番奥の居室の内部です。天井が高く、障子のように紙を貼った開口部が上まであり、明るい空間でした。


中国は土足の文化なので、椅子やテーブルがあり、インテリアは日本よりも西洋に近い感じがします。
北京も新市街はこんな感じでした。
いまは超高層ビルに変わっているかもしれません。



つぎは上海です。
約30年前の上海の街です。街路樹はプラタナス。
プラタナスの街路に面した古いタウンハウスを見てみましょう。
西洋と東洋が混ざり合った不思議な感じの建築でした。
上海のほうが北京より温暖なので、家は開放的にできていました。

これは別なタイプのタウンハウス。
長屋のような共同住宅でしょうか。
では、次回は水と庭園の都、杭州の街を訪れます。

お楽しみに!
(横内)