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T邸建具・左官工事

2023.04.28T邸(京都市北区)

年明け間もないころ、京都では大雪が降り積もるほど寒くなっていました。
T邸は家具や建具が入り、左官工事が進み、完成像がいよいよ見えてきました。
まだ設備は入っていませんが、日が差すだけで窓際はほんのりあったかいです。

暖房なしに暖かいのは、壁屋根をしっかりと断熱していることと、
複層ガラスの大開口窓に気密がとれるように工夫していることに理由があります。

窓を開けて外から見ると、その工夫がわかります。
写真上の方、胴差の側面に黒いスジが見えますでしょうか。
これはゴム製のパッキンで、建具側にも同じものがついていて、
窓を閉めるとパッキンが重なり合って隙間風を防ぎ、気密がとれる仕組みになっています。



木製建具の難しいところは、既製品のサッシと比べて気密を取りにくいこと。
でも木製建具の美しさを諦められないジレンマが建築家にはあります。
そんな闘いがこんな小さなスキマにあるんですね。



こちらは和室。

居間の解放感と異なり、こちらは落ち着いて籠れる感覚がします。
和の意匠にそんな作用があるのかもしれませんが、
それよりも建具の高さをぐっと抑えたことが効いていると思います。
丁度背の高さくらいの鴨居高さは伝統的なプロポーションで決まっています。

落ち着きの演出のための伝統的な寸法や素材の知識は、どんなに時代が進んでも有用で、そして伝統が古臭くならないためのデザインが時代ごとに必要なんだと思います。
何故落ち着くのかはわからないけれど、慣れ親しんだものには帰属意識が湧くんですかね。

この住まいには、庭と居間と和室の段階的な関係があって、居心地を選べる喜びがあると思います。


外へ出て家を眺めると軒先の水平ラインが美しいですね。
軒先の近くにつくばいが置かれました。もともとのお庭に置かれていたものです。
そろそろ造園工事が始まります。楽しみです。




秋吉